ウラジオ発:プロカメラマン  イヴァン・ジャキンさん

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大きな写真コンクールも多く、プロカメラマンも多いウラジオストクではカメラマンの競争も熾烈である。今回はそんな熾烈なカメラマン競争の中で、プロカメラマンとしてのキャリアを着実に歩むイヴァン・ジャキンさん(ИВАН ДЯКИН)にカメラマン(写真家)としての仕事や写真の評価、写真や現代アート鑑賞の方法などについて伺いしました。
 
 

 
 
–お生まれはどちらですか?
沿海州のナホトカです。大学でウラジオストクに来ることになりました。私は双子ですが、彼は両親の住むナホトカで今も生活しています。両親とは頻繁に連絡をとり、双子の兄とも毎晩スマートフォンでやりとりします。やはり双子なのでお互い寂しいというところがあるんでしょうね。
 
 
–イヴァンさんがカメラの世界に入っていったのは何歳頃ですか?
18歳です。18歳~23歳の間、学生のバイトとして少年キャンプの指導員のようなことをしていました。その時に、ウラジオストクで有名な写真家であるエヴゲ二ヤ・タルノヴァさん(ЕВГЕНИЯ ТАРУНОВА)、ナタリヤ タシキノヴァさん(НАТАЛИЯ ТАШКИНОВА)と知り合うことができました。彼女らは、カメラマンとしての卓越した仕事、素晴らしい写真を18歳の私に見せてくれました。ある日彼女らは「お化けみたい?」と言って、私を森に連れて行き、カメラでお化けを撮影し、見せてくれたりもしました。お化けではなく、カメラの技術で見せてくれたわけですが、こういった経験が私をカメラの世界に向かせてくれました。
 
 
                ファッションや結婚式写真で人気を博すエヴゲ二ヤ・タルノヴァさん(ЕВГЕНИЯ ТАРУНОВА)さん
 
 
–初めてカメラを購入されたのはいつですか?
24歳の頃、NIKON90というデジタル一眼レフを購入しました。
 
 
                                  今も愛用はニコン製
 
 
–学校卒業後すぐにカメラマンとして仕事を始めたのですか?
いいえ、カメラマンとしての仕事はまだまだで、普通の仕事につきました。その間、常にカメラを持ち、色々と趣味のような形で写真撮影していました。その自分の積もり積もった写真がある一定のレベルにあると認めてもらい6年ほど前に「沿海州青少年センター」にカメラ、ビデオ撮影係として採用してもらうようになったのです。それがカメラマンとしてのキャリアの出発点になります。
 
 

 
 
–沿海州青少年センターではどういうものを撮影されたのですか?
子供達の活動、中国などとの交流事業、ダンスなどあらゆるイベントをビデオ、カメラで撮影しました。
 
 
–沿海州青少年センターの後のキャリアを教えて頂けますか?
3年ほど勤務した後、沿海州知事付きの撮影係として1年半勤務しました。アンドレイ・タラセンコ知事代行や今のオレグ・コジェミャコ知事の撮影をしました。1年半勤務したのち、フリーランスとして活動しており、女性の肖像を注文で撮影したり、あとはニュース用の写真を撮影したりしています。
 
 
                         知事につきっきりのビデオ撮影は夜中の出動も多かった
 
 
–沿海州知事付きの撮影係の仕事はいかがでしたか?
朝から晩まで知事を撮影するために待機するという待ち時間の多い仕事でした。12時間待って、1-2分撮影するということもざらでした。また知事の行くところ、動く時間に一緒に帯同しなくてはいけないので、知事が中国へ行けば中国に行き、知事が夜中に仕事あれば、夜中に呼び出されるというような感じです。行ったことのないところに行けたり、北朝鮮の金正恩総書記がウラジオストクに来た時は国境のハサン駅に迎えに行ったり、極東フォーラムでプーチン大統領が来たときは、すぐそばで撮影したりと、なかなかできない経験もしました。青少年センターの仕事もそうですが、この知事撮影の仕事もカメラマンの収入としてはとても安定していました。しかし、毎日、待機、決まりきった角度で、決まりきったものを撮影するという創造性に欠けたものでした。やはり私には、自由や創造性を発揮するような場面が必要なので、今のようなフリーランスとして活動する道を選びました。
 
 
                            北朝鮮国境のハサン駅で知事が金正恩総書記を迎えた
 
 
–今のカメラマンとしての活動について教えて頂けますか?
依頼があれば、基本的には何でもおこなっていますが、私が得意で、よく行っているのが若い女性からの撮影依頼です。結婚式の撮影というのが本当は収入的にも仕事の多さからしてもいいのですが、結婚式撮影というのも結構決まりきった型があり、それに従って行えばいいというような私にとってあまり面白いものではないので、友人等の依頼以外は積極的に行っていません。
 
 
–イヴァンさんはいつ頃から女性の撮影を始められたのですか?
カメラを購入してから、頻繁に定期的に女性の撮影を行ってきて今に至ります。
 
 
–若い女性はどのようにイヴァンさんに撮影依頼をするのですか?
インスタグラムなどのSNSを中心として、私の撮影した写真を公開しています。それを見た女性が連絡をくれ、日時と場所を決め、撮影します。
 
 
–女性を美しく撮影するコツは何でしょうか?
どんな女性でも美しさを引き出し、キレイに撮影することができます。ただ単にいわゆる見た目というよりは、女性のポーズや髪型、視線、その女性の考えや性格といった内面、そして写真自体の色合いを統合して一番の美を追求します。私はよほどのことがない限り、フォトショップで加工したりはせず、その被写体としての女性とカメラのみでそれを実現し、被写体である女性に満足してもらうのが私の仕事です。
 
 

 
 
                        ナチュラルなものから幻想的なものまで女性の希望に応じ撮影し美を引き出す
 
 
–女性が満足するけど、イヴァンさん的には不満のときもあるのでしょうか?
もちろんあります。なぜかというと注文仕事である女性の撮影では、依頼主である女性が満足し喜んでもらうのが最も重要だからです。時によっては依頼主が満足し、私も満足するということはありますが、そういう時はそれほど多くはありません。お金で依頼受けて行う仕事は絶対的に依頼主視点で撮影しますし、逆にそれ以外の撮影やコンクールにおいては自分の創造性を第一に撮影します。
 
 
–なぜ女性ばかりの撮影で男性の撮影はないのでしょうか?
男性の撮影は皆無ではありませんが、極めて稀です。理由は簡単で、女性はお金を払ってでも美しい撮影を希望されるケースが多いですが、男性でお金を払って撮影するというようなことは無いからです。
 
 
                               イヴァンさんにとって数少ない男性の撮影
 
 
–依頼仕事の写真撮影とコンクール向けの写真撮影の違いについて教えていただけますでしょうか?
先程も言いましたが、依頼仕事は依頼主に満足してもらうというのが最終地点になります。よく依頼主の意見、希望を聞いて、実現するのに100%の力を注ぎます。通常の依頼仕事では、奇抜なものを求められることはなく、一般的なものを皆さん希望されます。それ以外のコンクールや展示会向けというのは、全く異なって、聴衆や来場者に何を伝え、どんな自分の考えを伝えるかというのが最終地点となります。そこではまずは、私自身の考えが出発点であり、私自身の創造性を発揮、展開させていきます。そのため時に、奇抜に、一見わけのわからない、エネルギーあふれたものになったりするケースも多々出てきます。
 
 
–イヴァンさんが最近取り組まれた創造的な作品について少し紹介いただけますか?
最近、ウラジオストク経済サービス大学で写真講義を1年受け、卒業作品として「環境に適応する」というのをテーマとした作品を作りました。この作品を作った時、私の心には「収入的にも仕事的にも安定したカメラマンとしての道と不安定ではあるものの創造性を発揮し活かす道」という2つの道がありました。私はそういった葛藤を心にもっていましたが、最終的に創造性の道を歩んでいくという決心を固めました。この作品は、宇宙から久々に戻ってきた人が、その慣れない環境に適応していくというものを表現していますが、これはまさに私自身の心境や覚悟を現したものなのです。
 
 

 
 

 
 
                    卒業作品は宇宙から戻った人間がテーマでイヴァンさんの現在の立ち位置や心境も表されている
 
 
–イヴァンさんにとって良い写真とはどういうものでしょうか?
私は現代アートが好きなので、現代アート視点になりますが、私にとっての良い写真というのは、撮影者の視点、考えがきっちりと説明され、その写真を見て深く納得できるような作品です。もちろん美しい写真、技術といった面は欠かせませんが、それ以上に、撮影者の考えや作品への説明としうのがしっかりしたものが私にとっての素晴らしい作品です。この視点は私だけのものではなく、多くの写真家にとって重要な要素かと思います。というのも多くのコンクールでは、最終選考まで残ると、その作品の背景や撮影者の意図を説明するような機会が与えられ、そこで素晴らしい説明をする人が優勝者となることが多いからです。作品から受ける印象というよりも、作品とその背景、ストーリーの融合というのが最終的な作品の出来と言えるのだと思います。
 
 
–作品と説明というのは現代アートの楽しみ方としても重要でしょうか?
はい、圧倒的に重要で、説明や背景のわからない現代アートというのは、誰がみてもわからないものです。私もウラジオストク現代アート拠点「ザリャー」にもよく行き現代アートを鑑賞しますが、説明なしでは全く理解できません。展示会のテーマや作品への説明があって初めて理解ができるものです。写真撮影も現代アートの1つになることが多いですが、現代アートとしての写真鑑賞も同様です。例えば、晴れの日に道路に1人の人間が立っているというシンプルな写真があったとします。なんの説明もなければ極めて平凡な写真になります。ただその写真を撮った街には道路が1本しかなく、そこにいくために何日も要し、かつ晴れの日は1年に1日しかないというような説明があると、その1枚の写真に圧倒的な価値が現れ、単なる写真とは違った作品となっていきます。現代アートも現代アート的な写真も、背景や説明をまず初めに読んでから鑑賞するというのが王道だと思います。
 
 
–今、ロシアでイヴァンさんが好きな写真家はいらっしゃいますか?
写真家としても活動しつつ、学生の撮影した写真に、成功写真と失敗写真の解釈を加え、動画を配信しているイヴァン・クンヤゼフさん(ИВАН КНЯЗЕВ)が大好きです。写真家としても卓越していますが、それ以上に、1つ1つへの写真の成功要素をわかりやすく説明してくれるので、とても面白いですし、とても参考になります。色、光、角度など多方面から1枚の写真を分析するその試みは素晴らしいです。
 
 
                          ロシアの前衛写真界で人気のイヴァン・クンヤゼフさん
 
 
                   イヴァン・クンヤゼフさんは写真や芸術を、感覚ではなく論理的に学生に説明するのが特徴
 
 
–イヴァンさんがコンクールによく参加されるのはなぜですか?
写真家、カメラマンにとって最も重要なのは「名」です。名のない写真と異なり、「~という写真家の写真」というところまでいくのが写真家にとって大切です。他の写真家が撮影したものとはことなり、独自の風合い、視点を認めてもらい、そして私という写真家を認知し、その認知度を上げていくのが当面の私の課題です。そのためには様々にコンクールに参加するのがとても良い手段になります。コンクールで優勝するというのはそれほど重要ではなく、入賞しなくてもいいのです。私のオリジナリティー、私の写真を認知してもらう手段としてコンクールに参加するのです。今はとくにインターネットが発達していますから、参加作品はインターネット上で公開され、展示会後に私の作品、撮影方法が好きだと連絡してくれるケースも少なくありません。ロシアの展示会でロシア人には認知されなくても、その作品を評価してくれる人が、ベトナムやタイに沢山いるかもしれません。今はそういう国境を越えて作品やカメラマンが展開していく時代です。作品の評価は国や時代によって大きく異なることも多いですからね。
 
 

 
 
–偉大な芸術家は亡くなった後に認められるケースもありますが、イヴァンさんの作品も後世に評価を得るということも想定されていますか?
私はそういう偉大な芸術家ではないので、私が元気に生きている間に評価され認知されたいです。芸術や創造の世界では、後世に評価が高まるというのはよくあることですが、私は現在に生きている人間なので、やはりなるべく早く、少なくとも生きているうちに写真家としての名を高めたいです。生活もありますからね。
 
 
仕事としてのカメラと自己実現、創造性発揮のためのカメラと2つの板挟みで葛藤しつつ、創造性の道を選んだイヴァンさん。理想のカメラマンや、美、色彩等多岐にわたって熱く語ってくれるイヴァンさんが、今後どのように成長し、どんな写真を見せてくれるか楽しみです。今後も彼の作品を追っていきたいと思います。



プロカメラマン  イヴァン・ジャキンさん

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