ウラジオ発:老舗ブリニーカフェ オーナー ナタリヤ・アレクサンドロヴナさん

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ロシア風おかずクレープ「ブリニー」といえば、伝統的に各家庭で作るというのが当然の概念でした。その概念をくつがえし、家庭ではなく、外で食べるものという風に変えたのが噴水通りのカフェ「ウフティ ブリン(Ух ты блин)。旅行者が訪れる必須のスポットとしても各国ガイドブックに取り上げられています。今回はこのカフェのオーナーであるナタリヤ・アレクサンドロヴナさん(Наталия Александровна)に、お店誕生や、9年間も人々に指示される秘訣などについて伺ってみました。
 
 

 
 
–ナタリヤさんのご出身はどちらでしょうか?
生まれは中国綏芬河との国境地域である「ポグラニーチナヤ」という街です。両親が2人とも国境警備隊員だったので、そのエリアに住んでいました。小学校3年まではそこで、その後は他の街に移り、大学を機にウラジオストクへ来ることになりました。
 
 
–大学からカフェ「ウフティブリン」を開くまでについて教えてください
大学では国際経済学を勉強し、ある会社でフィナンシスト(金融スペシャリスト)として勤務しました。その後、夫と一緒に
若者向けの洋服屋を噴水通りの今の店の場所で始めました。その洋服屋は2年ほど運営しました。そして今のカフェ「ウフティブリン」に至ります。
 
 
–家庭で作るのが当然と考えられるブリニーのカフェをなぜ始められようと思ったのですか?
カフェ「ウフティブリン」を始める少し前に、子供が生まれたのですが、その子供の好物がブリニーでした。ただレストランやカフェで食べようと思っても、家庭料理であるブリニーを食べれるところがなかったのでした。ちょうど洋服屋を辞めようと思っていましたが、この噴水通りの場所を明け渡すのは惜しい気がして、それでブリニーカフェをやろうということになりました。まだその頃の噴水通りには英国カフェ「FIVE OCLOCK」しかない初期の頃です。お店がOPENしたのは9年前の5月9日です。
 
 
                                   人気散歩スポットの噴水通りで2011年にOPEN
 
 
–家庭で作るのを当然とするブリニーですが、なぜその専門カフェとしようと思われたのですか?
ブリニーは家庭でお母さんが作るというのが、その当時の概念でした。ただ当時すでに、お母さんも忙しくなっていて、ブリニーだけのために、生地をこねたり、フライパンで焼いたりという時間がなかなか取れない状況になっていました。この社会的環境の変化が1つです。それに加え、家庭で作るブリニーは大抵、ハチミツやスメタナ(サワークリーム)などの甘いブリニーとなります。家族の中には、甘くないブリニーを食べたいという人もいます。家庭ではそう何種類も作ることはできません。そういう状況から、ブリニー1本でもなんとか成り立つのではと思いました。
 
 
                            ブリニーは家族揃って食べるロシアの伝統料理の1つ
 
 
–ナタリヤさんのアイデアについて周囲の反応はいかがでしたか?
当時の飲食店関係者は、ほとんどがうまくいかないと思っていました。ブリニーは家庭で作るもの、しかも作り方が簡単だからわざわざカフェにお金を出して食べに来ないというのが、大多数の意見でした。
 
 
–ナタリヤさんのブリニーカフェがうまく行って皆驚かれませんでしたか?
うちのお店は2年目からは安定してきて、まずまずうまくいくようになると、真似するところも出てきました。ウラジオストクのみならず全ロシアで類似のカフェが出来ました。店名である「ウフティブリン」を使う店まで現れたのです。そのため、店名を商標登録したりもしました。当時は類似のカフェを運営していたお店も、1年、2年とたつとほとんどが消えてしまいました。
 
 
–ナタリヤさんのブリニー作りには何か秘訣があるのでしょうか?
この9年間、常に苦心するのが、OPENした時の味を保つということです。美味しいレシピでOPENしましたが、常にその味を出し続けるというのが、なかなか難しいことなのです。誰もが言うように、ブリニーそれ自体は難しい料理ではありません。秘訣があるとすれば、そのレベルの維持ということでしょうか。幸い長年勤めてくれるコックたちもいてくれるので、質を保つことができています。
 
 
                             毎日同じ品質を保つのが一番大変という
 
 
                             トッピングにも安定感が欠かせない
 
 
–豊富なメニューは誰がどのように決められているのでしょうか?
OPEN当初のメニューは大体30種類くらいで、私や主人が中心に決めました。ただその後は、どんどん増えていったのですが、それはお客さんや店のコックが要望やアイデアを出してくれたからです。OPENしてしばらくすると、お客さんが「チーズとパインナップルを合わせると美味しいんだけどメニューにしてくれないか?」というような自分の好みに合わせて要望を言ってくれるようになったのです。それをスタッフがきちんと拾い上げて、メニュー化していきました。コックはコックで、自分が美味しいと思う組み合わせを提案してくれて、それもメニューとして加えていきました。またここ数年旅行者が増えたのですが、旅行者は数人で来られて、何種類か頼んで1つのテーブルに並べることが多く、それを見たスタッフが旅行者用のセットメニューを作ったりもしています。今では50種類以上ありますが、これらはお客さんやスタッフとの共同作業のたまものです。
 
 
                         人気のサーモン&キュウリもお客さんの要望から生まれたもの
 
 
–人気メニューを教えて頂けますか?
定番で人気は、「ハム&チーズ」「チョコ&バナナ」です。この2つはロシア人、旅行者問わずよく出るメニューです。旅行者だけによく出るメニューというのもあって、それが「イクラ」です。ブリニーにイクラをのせたものは旅行者向けには定番メニューとなっています。
 
 
                              ここ数年で急増する旅行者はイクラ入りを選ぶ
 
 
–ウラジオストクで飲食店を約10年も続けるのは非常に大変かと思いますが、従業員教育などで気にかけていることはありますか?
スタッフとの良い関係作りは常に心掛けていて、単に労働者と会社というよりも、もっと友人的な関係性を持てるようにしています。スタッフは家庭生活などでも問題や悩みを持っているような時がありますが、そんな問題や悩みも相談にもいつでものっています。たまに金銭上の問題を抱えている場合もあるますが、そんな時にもできるだけ聞いてあげるようにはしています。親しい友人に接するように、お互いが助け合うような環境づくりです。親しい友人とはバーベキューに行ったり、新年を一緒にすごしてゲームしたりしますよね、それと同様にお店のスタッフともできるだけ、そんな時間をもつようにしています。ただ洋服屋時代に、あまりに友達関係になってしまい組織として上下関係が全く機能しなくなってしまったので、今のカフェでは親しい友人関係を基礎としつつ、組織としての上下も忘れないようにはしています。こんな感じで運営してきましたが、幸い長く勤めてくれる人もいて、ナスチャやジェーニャは8年も一緒に働いてくれていますよ。
 
 
                          全業務をこなしお店の顔でもあるナスチャさん(左)とジェーニャさん(右)
 
 
–「ウフティブリン」を他の都市で行う計画はないのですか?
実はハバロフスクやサハリン、その他の都市でフランチャイズをやりたいという声を結構いただいてはいるんです。ただ、他の都市では味やサービスに責任を持てるような気が今のところしません。9年間育て、人々に指示してもらったこのカフェの名に恥じないようなことが確信できれば、フランチャイズも考えないわけではないのですが、まだ時間がかかりそうなので、当面、他の都市、フランチャイズといった計画はありません。
 
 

 
 
–新しいお店「ババ トーマ(БАБА ТОМА)」について教えて頂けますか?
「ババ トーマ」はロシアの伝統家庭料理である「ピロギ」(ロシア風パイ)を中心としたお店です。テイクアウトを中心としているため、席数は少なめです。店名の「ババ トーマ」は夫の祖母が「トーマ」であったため、そこから取っています。ババはおばあちゃんという意味です。
 
 
                               2つの店舗は歩いて1分の距離にある
 
 
–なぜピロギのお店にされたのでしょうか?
私達の事業の使命は「ロシアで失いかけている家族や世代間の温もりある集いや繋がりを思い返す」で、その使命に基づいて出てきたアイデアがピロギです。ブリニーもそうですが、ピロギは伝統的にお祖母ちゃんやお母さんが作って、それに子供や孫、皆が集って食べ、一緒に時を過ごすという、家族や世代を結び付ける食べ物です。夫はトーマおばあちゃんが子供時代に頻繁にピロギを作ってくれ、それを食べて家族と過ごした時間を温かい幼少期の思い出として今も持ち続けています。ピロギというのはロシア人にとって、そんなそういうシンボル的食べ物なのです。ウラジオストクでは似たようなテイクアウトの食べ物としてはピザがあり大全盛ですが、ピザは外国の食べ物で、しかも、そういう温かい家庭を思い返すような力はありません。温かい家庭や世代のつながりを思い返させることのできるピロギこそが私達が提供するべき商品だと思いますし、他の人がやらないことこそ私達のやるべきことだと思っています。
 
 
                           大きなロシア風パイ「ピロギ」は世代を結び付ける食べ物
 
 
                            ひき肉、キノコ&チキン、チェリーなど数種類ある
 
 
–ロシアでは家族や世代間の繋がりが薄れているのですか?
私は海外旅行が大好きでアジアや他のヨーロッパ諸国もいき、観察しますが、ロシアでは家庭的、世代的なつながりが薄れてきているように感じます。仕事で忙しくなったり、家族や世代間の繋がりに重きを置かない傾向が出てきたりといった理由からかと思います。
 
 
–ウラジオストクで好きな場所はどこですか?
私は海と山が大好きです。時間があれば海や山に行きます。海も山も人間にエネルギーを与えてくれて、私の生きる活力源です。まだまだ実現に遠いですが、海のそばですぐそばに山があるような場所に一戸建てを持てたらどんなにいいだろうなぁと思っています。もちろんウラジオストクの住人なので、マリンスキー劇場や、ゴーリキー劇場も好きな場所で、よく行きますが、私のとっては海と山がベストポイントです。
 
 
                              海と山からもらうエネルギーはナタリヤさんの活力源
 
 
–ウラジオストクで好きな飲食店と理由について教えていただけますか?
「ZUMA」と「ツェフ(ЦЕХ)」です。ZUMAはいいメニュー作りをされていて、それでいていつも変わらず美味しい。「ツェフ」は古い壁のインテリアもなかなかですが、料理自体が少し面白いものがありつつ安定感があります。コロナ前は「OLD FASHIONED」という潜水艦近くのお店も好きでしたが、コロナで閉店となってしまい、ちょっと残念です。
 
 
                     日露戦争時期の壁をそのまま使ったユニークな店内の「ツェフ(ЦЕХ)」がお気に入り
 
 
–「ウフティブリン」も「ババ トマ」も赤レンガの内装が可愛らしいですが誰が手がけているのですか?
内装デザインついては結構人任せな部分もあって、基本的にはデザイナーさんに任せています。工事に関しては、基本的には内装職人さんにやってもらいますが、スタッフが自分達でいろいろ手作りで加えたりして自分達色が少し出るようにもしています。うちの夫は自分の仕事があるので、カフェの運営にはほとんどタッチしませんが、内装作業に関しては少し手伝ってくれて、内装の時期になるとお店に顔を出してくれます。因みにうちのお店では毎年年末に内装を変更するようにしています。
 
 
                              内装にはスタッフやご主人も関わる
 
 
–最後に将来的な計画や夢がありましたら教えてください?
直近のものとしては「ウフティブリン」の2号店をセダンカシティーにOPENします。ここ数年旅行者が急増して、地元ロシア人のお客さんが、なかなか席を確保できないということがありました。セダンカシティーのお店は、そんな地元のロシア人のお客さんに向けたお店です。それ以上の計画については今のところありませんが、いずれにしても私達の使命は「ロシアで失いかけている家族や世代間の温もりある集いや繋がりを思い返す」ということなので、この路線に沿い、かつ他の人が取り組まないものを手掛けていきたいと思います。個人的なところでは、さきほども言ったように、海の戸建てですが、これもだいぶ先ですね(笑)。
 
 
                             孫とお祖母ちゃんなど3世代で利用するお客さんも多い
 
 
ナタリヤさんのモットーは「誠実」「明朗」「好意あふれる」なのですが、スタッフへの接し方や、お店のミッションからも彼女のモットーが感じられました。そんな彼女の思いや態度がスタッフにも伝わり、スタッフの定着率にもつながっているのがわかります。簡単で競合も現れやすい「ブリニー」という国民的おやつで9年も一線を行くナタリヤさんですが、彼女の事業がどのように展開し、どんなロシア庶民料理で家族や世代の絆を創出してくれるか楽しみです。

お店の紹介:http://urajio.com/item/0139



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