ウラジオ発:障害児向け創作活動教室 主催者 ゲンナヂー アントロポフさん

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精神障害児向けの創作活動教室「ブラーガエデェラ(Благое дело)」はウラジオストクで老舗でかつ、もっとも発展する教室。2008年に設立された同教室は国や州政府からも高く評価され、1300㎡もある建物と敷地を与えられた。この大きな施設は2021年にOPENを予定している。この教室を創立し運営するのが自身も障害児を持つゲンナヂー アントロポフさん (Геннадий Антропов)。今回はゲンナヂーさんが教室運営の経緯や、大きく運営に寄与した日本との関わりなどについて伺いしました。
 
 

 
 
–2008年に創立された経緯を教えて頂けますでしょうか?
2005年に娘ナスチャが精神障害をもって生まれました。医者からは寝たきりで言葉も話せなくなるにちがいないと言われましたが、自分なりに彼女の成長を助けたいという、そういう父親としての思いで始めました。成長したナスチャは今では演劇まで出来るようになっています。この教室は大きく広がりましたが、当初の理由は、自分の子供のため、それだけです。
 
 
                           ゲンナヂーさんの教室運営のきっかけとなったナスチャさん              
 
 
–当初はご自身のお子さんのためにやられていたのが、どうしてここまで広がったのでしょうか?
娘には当然、友達が出来ます。通常は、同じように精神障害を持った子が友達となります。そしてその友達には親がいます。娘の友達やその両親を助けていたら、どんどん輪が広がり、今のレベルになりました。
 
 
–教室で、精神障害の子やそのご両親はどのようなサポートを受けられるのでしょうか?
子供は陶器づくりを中心とした様々な創作活動に取り組めます。当初は陶器づくりだけでしたが、今では写真撮影、演劇、料理などにも取り組めるようになっています。犬と交流するセラピーも最近は始めました。両親は大体皆同じ問題を共有しますから、お互いに相談に乗ったりしますし、時には法律的な面でのアドバイスをしたりもします。子供も親も完全に無料です。
 
 
                            ナスチャさんを含め教室では演劇活動も行うようになった
 
 
–子供たちは何名くらいが、どのくらいの頻度で通うのでしょうか?
うちの教室はウラジオストクに2か所、アルチョム市に1か所あります。ウラジオストクの2か所で合計70名の子供たちが週1-2回程度通います。アルチョムも70名ほどです。親も同伴しなければいけないので、仕事が休みの土曜日に来る子が多いです。アルチョムは現地の人に運営を任せていて必要に応じて行ったり、アドバイスしたりしています。
 
 
–先生やボランティアはどのくらいいるのでしょうか?
正規の先生は11名です。先生達は各分野のプロで、教育学、陶芸、演劇など様々な人が関わっています。その他にボランティアとして50名くらいが運営を助けてくれています。ボランティアは専門家ではなく、活動に携わる中で少しずつ経験を積んでもらっています。
 
 
                                 ボランティアは50名も活躍する
 
 
–なぜ陶器を中心としているのでしょうか?
私自身が陶器の専門家で、今の事業を始める前も大学で陶器を学生達に教えていました。今も様々な場所でお呼びがかかるので陶器の専門家としても活動しています。精神障害の子供にとって、手作業をするということは脳にとてもいい影響を与え、成長における大きなプラスとなります。陶芸以外の方法でも沢山、障害児達の成長にプラスになることはあるのですが、たまたま私が陶芸の専門家でその有益性も知っていたので陶器づくりから始めました。
 
 
                                   教室運営前は陶芸のプロとして活躍した
 
 
–子供達が取り組む際に注意されていることはありますか?
いつも気を付けているのが子供達が陶器づくりを嫌いにならないことです。特に第一回目の授業はとても大事で、どの子がやっても絶対キレイに完璧に仕上がるような作品に取り組んでもらいます。子供は理想的な作品ができることで陶器作りを好きになり続けていくようになります。そして簡単なものから少しずつ難しいものへと移行していきます。
 
 
                              子供たちの作品には独特の温もりがある
 
 
                             完成度の高いものは販売商品となる
 
 
–2008年から大きく発展されましたが秘訣はなんでしょうか?
一番大きいのは、2010年に子供達と4名で日本に招待され、今の我々の原型になるようなモデルを「藍工房(現社会福祉法人 藍)」で見れたことです。2009年に藍工房の創立者で自身も障害者である竹ノ内睦子さんが御自身のプロジェクトでウラジオストクに来られました。その際に我々の作品も目にとめてもらい、高く評価され、翌年に東京へ招待してくれました。東京の新宿で、合同展示会を行ったんです。竹ノ内睦子さんは私に特別にアレンジしてくれ、御自身が約30年発展させてこられた工房、うまくやる方法などを詳細に見せて教えてくれました。日本に行く前の私は全く素人同然で教室運営をしていて行き当たりばったりでやっていたような感じでしたが、藍工房を見せてもらって模倣ができ目指すべき方向性が定まりました。当時の藍工房では食品事業もうまくやられていましたが、今は我々のところでも少しずつ食品事業に乗り出しています。1回だけの訪問ですが、あの2010年で本当に大きいものを掴ませてもらいました。今でも感謝してますし、小林千香子さん、田代紀子さんといった関係者とは未だに連絡を取り合っています。日本以外にも中国、アメリカといった場所へ研修に行かせていただく機会を得られ、そのたびに発展の種を持ち帰って常に教室運営に付け加えるようにしています。
 
 
                               現在の礎となった2010年新宿での共同展示会
 
 
                          ゲンナヂーさん達を日本に招待してくれた竹ノ内睦子さん
 
 
–通所は無料ですが、経済的に大変ではないでしょうか?
国や州政府の一定の資金援助はあります。以前は行政が直接このような事業をおこなっていたのですが、行政がこのような事業を行うと、お金は莫大にかかるわりに効果が小さいという問題がありました。優良な民間団体に任せた方がうまくいくという認識で一致し、最近は責任感のある優良団体を選別した上で資金援助をするようになっています。ただ行政からのお金だけでは十分でなないので、子供たちの作品や食品を販売したりして自前で稼ぐ必要があるのです。幸い、いつの段階でも助けてくれる人がいて、販売ルートを確保してくれたり、寄付してくれたりすることがよくあります。この教室も市内中心でいい場所にあるのですが、ある企業の社長が個人として無償提供してくれています。資金はいつも十分ではありませんが、同時にいつの段階でも支援者があらわれるというような状態です。
 
 
                          一等地の教室は善意ある会社経営者により無償提供されている
 
 
                        長年の責任ある運営が評価され補助金は受けやすくなってきたという
 
 
–精神障害児は増えているのでしょうか?
はい。ロシアでは過去3年で30%も増加しています。
 
 
–ロシアでは養護学校のような毎日通える施設はないのでしょうか?
モスクワに一部ありますが、基本的にはそういう公的教育施設はありません。我々のような小さい民間機関のみとなっています。ただこれをもって、ロシアが遅れているということはなく、その国ごとの事情があると思います。
 
 

 
 
–今取り組んでいることや、将来の展望について教えていただけますか?
1つ目は1300㎡新施設OPENです。の建物を行政より頂くことができたので、そこを1年後に開所します。陶芸、演劇、写真撮影、料理といった創作、芸術活動に取り組める総合的な施設です。子供達には陶芸以外にも様々な選択肢があればあるほどよいのです。施設内は今、障害児の両親たちが一生懸命整備してくれています。2つ目はモスクワでの展開です。モスクワにパートナーがいるのでモスクワとも相互活動ができればと取り組んでいます。3つ目はアメリカやインドネシアなどとの国際的な相互活動です。これも色々なプロジェクトが立ち上がっています。国が異なると政府レベルでは、いろいろな争いごとが出ますが、一般庶民のレベルではそんなことはありません。精神障害児やその親を取り巻く問題は、どの国でも共通なものです。どんどん交流し、アイデアや意見を交換し合うことはは双方の障害児や親にとってプラスなことです。私は楽観的な性格ですし、幸いにも私のロシア国内外のネットワークがどんどん広がるので、実現していけるのだと思います。1300㎡の施設のプロジェクトだって当初は誰も本気にしていなかったけど、こう実現してしまったわけです。なんとかなると、楽観的に考えていますよ。
 
 
                            1300㎡の新施設はピエルバヤレーチカ駅徒歩5分の好立地
 
 
                                    新施設の設計図
 
 

                          双国にプラスとなる国際的なプロジェクトにも積極的に取り組む
 
 
陶器作りをはじめとした手を使った芸術、創作活動で、精神障害児に達成感を味わせてあげたいというゲンナヂーさん。当初は娘ナスチャさんの為に始めた教室も、今は大きく発展しています。周りへのサービス精神が旺盛で明るく前向きな性格が自然と周囲を巻き込んでしまうのでしょう。芸術の街ウラジオストクらしいゲンナヂーさんの創作教室が今後どんな発展を遂げるか楽しみです。ゲンナヂーさんの携帯には将来のアイデアで一杯で、障害の有無を問わず日本の子供達との交流も計画にはいっていました。ご関心ある方はご一報どうぞ。

教室のHP:http://blagoedelo.com/
藍工房のHP:http://www.aikobo.or.jp/



障害児向け創作活動教室 主催者 ゲンナヂー アントロポフさん

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