ウラジオ発:拡大,発展を望まない小さなカフェ店主 エフゲニー・トゥルシェンコさん

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市内からちょっと外れたところに5席と小さいながらお客さんに愛されるカフェ「REGULUS COFFEE」がある。人気があり周りからは、店を大きく展開した方がいいという声も多いなか、店主は自分のスタイルを貫いていく。その店主こそはエフゲニー・トゥルシェンコさん(Евгений Трушенко)。今回は小さなお店に込められた思いや、エフゲニーさんの人生哲学について伺ってみました。
 
 

 
 
–エフゲニーさんのご出身をお聞かせいただけますか?
私はウクライナの港町オデッサで生まれました。生まれて少しして父の仕事の影響で、ウラジオストクへ移住することになりました。父は海上の仕事をしていましたが、国の指示でウラジオストクで仕事することになりました。小さい頃はオデッサに年一度は帰郷していました。小中学校時代はウラジオストクで過ごしましたが、大学はオデッサで1994年に卒業しました。1994年当時は、ソ連崩壊後でウクライナの生活がだいぶ厳しくなったのでウラジオストクに再び来ることになりました。
 
 
–エフゲニーさんは、どのような子供時代を過ごされたのですか?
ウラジオストクで中国語に特化した小学校に入学することになりました。私が選んだわけではなくて、両親が何を思ってかそういう学校に入れました。大学も中国語を学びました。
 
 
–中国語は今でも使われるのですか?
大学を卒業してからは一切中国語に関わる仕事をしていませんでしたので、ほぼ全て忘れてしまいましたよ。
 
 
–大学卒業後はどのようなことをされたのですか?
ウラジオストクでアクフェスという会社に勤めました。そこではニュージーランドとの貿易をしていました。仕事でニュージーランドに行ったりもしました。そして1996年に現代ホテル(現ロッテホテル)が建設されたのですが、その際に現代ホテルに移ることになりました。現代ホテルでは慶州に4か月の研修に行かされ、そこではホテルやレストラン業について学ぶことになりました。そしてその慶州でコーヒーの淹れ方も身につけるようになったのです。そして研修から戻り、2000年までの3年間、現代ホテルの宴会場マネージャーとなりました。2000年にウラジオストクの第一号カフェテリアがOPENしたので、そこのバーテンダーとして仕事するようになりました。そこで現在の妻とも知り合いました。その後、パパラッツィアという噴水通りの店に移り1年半ほどバーテンダーとしての仕事を一度ストップしました。
 
 

 
 
–バーテンダー仕事の後は何をされたのですか?
友人に誘われ、飲食業の立ち上げから運営までを行う、総合プロデュースの会社に入りました。当時ウラジオストクで一世を風靡した「SUSHI BAR WASABI」「ZEN CAFÉ」「モンマルトル」などの店は私達が行ったプロジェクトです。その後も私は総合コーディネーターとして何個かのプロジェクトを行いましたが、2015年末にプロジェクトが全て終わってしまいました。2016年の新年の時に、私は職が無い状況となり、何かを始めようと思いました。そして今度始める際は、人のお金で人に雇われるというのではなく、自分の店を自分のお金で始めようと思いました。そして妻と相談して、今のこのお店「REGULUS COFFEE」を2016年1月にOPENさせました。
 
 
                         5席の小さなお店はエフゲニーさんにとって十分な大きさ
 
 
–REGULUS COFFEEは少し郊外にありますが市内中心は考えなかったのですか?
立地はたまたまです。ちょうど不動産情報をあたっていたら、今の場所が見つかって、大家に連絡とってみたら、他にも検討者がいることがわかり、勢いで即決してしまいました。立地については偶然です。
 
 
–コーヒー以外にも色んな飲食店が想定できたと思いますが、なぜコーヒー店なのですか?
私は小さい頃からコーヒーが好きで、ずっとコーヒーを飲んでいます。私の家では子供もコーヒー好きですしね。それ以上に大きな理由は、コーヒーとその焙煎、淹れ方には無限の広がりがあり、それが私は大好きでした。コーヒーを淹れる過程は、まさに職人の世界です。やればやるほど熟練しそして永遠に上達していきます。コーヒーを淹れること自体は難しいことではありませんが、そこにプラスアルファ、いわゆる愛のようなものを1杯に足していくのです。こんな世界観は私にとって魅力的です。
 
 
                        コーヒーは淹れれば淹れるほど上達し、その奥深さがたまらないという
 
 
–お客さんは常連さんが多いのですか?
大体は常連さんで、1日に60人から100人がテイクアウトを中心として立ち寄ってくれます。今はコロナウイルスで多くの飲食店が営業できず、営業できてもかなりの制限があり、大変ですが、おかげさまでうちの店は元々テイクアウトが中心で、かつ常連さんばかりなので全く影響がありません。それどころか、夏にしては例年より繁盛しています。お客さん自体が外出や旅行できないので、うちに寄ってくれる頻度が増えているんです。
 
 
–4年の間に繁盛されていると、店を大きく広げたりとは思われないのですか?
仲間やお客さんからも頻繁にチェーン展開や店舗拡張の話を言われます。でも私は今のこの小さなお店と、今の生活で十分満足しているので、これ以上のことは考えません。「釣り人と金持ち」の寓話をご存じでしょうか。1人の釣り人が小舟で釣りをしながら、横になり、パイプタバコを吸っていると、それを岸でみた金持ちが「なんで魚をつらないで休んでいるんだ?」と、釣り人は「家族のために十分な魚を釣れたから、今はタバコを吸って休んでいるのさ」と答えます。金持ちは「もっと釣ればいいじゃないか?」というと、釣り人は「何のため?」と答え、金持ちはあきれ「もっと釣れば、それが市場で売れるし、もう2つ小舟を出して沢山の人で釣れば、さらにまた沢山売れるじゃないか」と言います。釣り人には何の事かわからず、ただ最後に答えます「いいだんよ、家族の分魚をとって、タバコを吸って休んでいれば俺は十分幸福なんだよ」と。この寓話にあるように私は、今ある生活、今来てくれるお客さんで満足だし、この今の状態自体を楽しんでいるんです。もし今以上の事を望めば、それはそれでまた必要な事もそれに合わせて出てきます。釣り人のように「なんのため?」というのが私の気持ちです。私は、今いるお客さんや自分の妻、子供たちに関心や自分の時間を割いていきたいのです。もし発展や大きくすることを考えたら、それもままなくなります。
 
 
                               「釣り人と金持ち」の寓話にある釣り人に人生を見る
 
 
–エフゲニーさんにとっては今のままの状態が一番いいのですね?
はい、今の状態が一番理想的な形態です。毎日5時に起きて、エッグタルトの仕込みをします。そして家を出て、8時にお店を開けます。そしてお店に立ちます。私にはこれで十分です。私の仕事自体には無限の奥深さがありそれでとても楽しいですし、何より私の仕事でお客さんを幸福にすることができて、お客さんの生活に何かプラスをもたらすことができます。お金を単純に稼ぐというようなものよりも、私にとっては、そういうことが重要だと感じられるのです。巷にあふれるファーストフード店のように、人々にプラスをもたらさずに、たんにお金を目当てにビジネスをするというのは私の行く道ではないです。もしやれといわれても私にはできない。私の道は自分なりに目的もって、自分のある技を仕事に注ぐ、それだけです。
 
 
–「道」とおっしゃると日本のような考え方に近いかもしれませんね?
そうですよ、私のいう道というのは日本の「道」という概念にとても近いです。欧米の文化というのは、目的と結果を重視します。結果を重視するので過程を感じたり、楽しむというのはあまりしません。稼いで稼いで発展させ外に広がる、それが典型的な欧米型思考です。日本のような東洋では目的や結果よりも、今その瞬間とその過程を重視しますよね。私はそのような日本的な、結果よりも過程を大事に、そしてその過程を楽しむ、外に発展よりも内を充実させるような仕事や生活を送りたいのです。日本の数寄屋橋次郎さんという寿司職人さんは有名で、私は全く及びませんが、どちらかというとそういう風にありたいと思うのです。
 
 
                          数寄屋橋次郎さんの生きざまは多くのロシア男性に影響を与える
 
 
–エフゲニーさんは東洋的な考えもお持ちなのですね?
はい、小学校が中国語を学べる学校で、幸い、両親がそういうところに入れてくれたので、東洋的なものに触れる機会を幼少から持てたんだと思います。それと店で出す「エッグタルト」を学びにポルトガルにいったのも影響していると思います。ポルトガルはアフリカにも近くて、ヨーロッパの中では一番東洋的な国です。500年ほど前はスペインとポルトガルで全世界を席捲した覇権国でしたが、今は貧しい、質素な国です。そんなポルトガルですが、私の目には東洋的発想の生活、人々がとても幸福で輝いて見えました。60-70歳の高齢の方が小さなカフェや食堂をもって、朝は早くからお店を開け、ゆったりとお店で仕事し、新聞を読んだりとなんとも楽しそうなんです。釣り人と金持ちの話でないですが、いかにも釣り人のような感じで、人生そのものの過程を楽しんでいました。この東洋的な生活スタイルに感動しました。覇権国から落ちてもこんな素敵な生活ができるんですよ。
 
 
                        ポルトガルではエッグタルトの他、しあわせについても習った
 
 
–最後に店名のREGULUS COFFEEの由来について教えてください。
これは私の大好きな作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの本「星の王子様」のラテン語名です。私は小さい時に父がこの本を与えてくれ、何度も読むようにと言われました。私は小さい時から、47歳になる今まで、何度何度も読んでいます。いつも新しい発見をもたらしてくれる素晴らしい哲学的作品です。私の人生に絶えず良い影響を与え続けているこの本を店名につけさせてもらいました。
 
 
幼少から人生のヒントをくれ続ける「星の王子様」はお店にも置かれている
 
 
足るを知る、今あるものを味わい楽しむという言葉を何度も繰り返すエフゲニーさん。そんなエフゲニーさんの思いが詰まった小さいけど温かみのあるお店には、知らずとそんな彼の姿勢に惹かれるお客さん達が集まってきます。派手に大きく展開するのを良しとするウラジオの飲食シーンにおいて、抑えのきいた東洋的な経営者としてエフゲニーさんはとても貴重な存在です。拡大や発展という言葉が行き詰まってきている昨今、エフゲニーさんのような在り方が注目を浴びてくるような感じがします。人々のライフスタイルにちょっとしたヒントを与えてくれるREGULUS COFFEEは拡大はしなくとも、長く続いてくれるにちがいありません。

お店の紹介:http://urajio.com/item/0398



拡大,発展を望まない小さなカフェ店主 エフゲニー・トゥルシェンコさん

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